子供の落書き帳 Remix

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黒井千次「春の道標」難読語一覧と、文章に振り仮名を書かないことの弊害
2013/08/10(土) 15:30:28

黒井千次の小説「春の道標」について、前回に続いて記事を書く。
明るく爽やかな恋愛なのに、主人公は暗い感じ 黒井千次「春の道標」 子供の落書き帳 Remix
前回は全体的な感想であったが、今回はもっと細かい話である。

・文章中の難読語・難読漢字一覧
・文章に振り仮名を振らないことの弊害について
・俺が気になった文を抜き出した

内容はこの通り。……誰が得するんだろうこの記事。


この記事を書いた理由


「春の道標」を図書館から借りてきて読んだのだが、本の漢字に殆ど振り仮名が無かった。「えっ、これに振り仮名が無いの!?」などとツッコミを入れながら読み始め、しまいには難しい漢字をメモりながら読んでしまった。そんな訳で文章中の難読語を書いておく。

前に借りた人が難しい漢字には振り仮名を鉛筆で書いていた(注意:図書館から借りた本に書き込みをするのはやめましょう)。ただし辞書で調べたものの、ちゃんと調べていないことも多かった。「躊躇い」に「ちゅうちょ」と振り仮名があったので「そ、それは違う……」と思った。
なおこの人は途中で読むのをやめた様子である。振り仮名があるの、始め2割くらいだけだったから。

「春の道標」中の難読語


数字はページ数。版型によって違うが、俺が読んだ単行本はこのブログ記事の末尾のリンクから行ける。

22 櫟(くぬぎ)は誰かがふりがなを振ってくれなければ読めなかった。

24 綽名(あだな) ポメラのATOKでも変換できなかった。広辞苑ではちゃんとこの漢字が出る。なお、「あだな」と読む単語には2種類あり、以下の通りらしい。出典は大辞泉。
徒名 1 男女関係についてのうわさ。浮き名。「―が立つ」 2 事実無根の評判。
渾名/綽名 《「あだ」は他・異の意》本名とは別に、その人の容姿や性質などの特徴から、他人がつける名。ニックネーム。あざな。
「あだ‐な【徒名】」 の意味とは - Yahoo!辞書
「あだ‐な【渾名/綽名】」 の意味とは - Yahoo!辞書
ついでにポメラ付属の明鏡辞典を見たら前者が「「徒名・仇名」、後者が「渾名・綽名・諢名」で何故か漢字変換が一番充実してた。

25 『六法全書は箱のように四角くて所々が爪の形に刳られているのが面白かったが……』刳るは「えぐる」かなぁ。他に「くる・さくる・しゃくる」と読めるらしい。「くる」は「くりぬく=刳り貫く・刳り抜く」の「くる」で、「物の内部や内側に穴をあける」の意だが、六法全書に穴をあけられるとは考えにくいし、よく分からない……。

26 旧字体の文章が並んでいるのに振り仮名はなし。團體(団体)は誰かが振り仮名を書いてくれなければ読めなかった。

29 小道の出口近くに蹲って(うずくまって) 「またがって……!?」と一瞬思ってしまった。

60 あの娘(こ) に振り仮名あり。標準的な読み方ではないからか……? 現代の人々は「男の娘」に慣れたせいでいとも簡単に読めるだろう、ごめんなさい何でもないです。

61 驟雨(しゅうう)

64 もしかしたら罰(ばち)が当たったのかもしれない に振り仮名あり。 「ばつ」との混同を避けるためか。

95 会場のあちこちから弥次(やじ)が飛び 「野次」以外にも漢字のあて方があったのか、知らなかった。

96 蔕(へた) 果物のヘタである。読めなかった。

120 戦き(おののき)に似た感情 漢検の勉強してなかったら読めなかったよ、これ……。

134 聳やかす(そびやかす)

149 打擲(ちょうちゃく) なんでこんな読みなんだろう。漢字辞典によれば、「打」という漢字の「ダ」という普通の音読みは唐音、「チョウ」という読みは呉音らしい。「擲」も同様で、唐音は「テキ」である。乾坤一擲(けんこんいってき)、投擲(とうてき)などに使われている。呉音は「ジャク」である。つまり「打擲」は、奈良時代より前から作られた単語だということでいいのだろうか……? なんでこの単語だけが呉音で読まれるのか分からない。

171 短靴 (たんぐつ/たんか)

181 闊葉樹 (かつようじゅ) 広葉樹の旧称らしい。
「かつよう‐じゅ【闊葉樹】」 の意味とは - Yahoo!辞書

182 躱す (かわす)

183 いくら縮めようと踠[足宛]いてもその距りは無限に拡がるばかりと思われた。
今回の最難関。まず、文字からして普通には入力不能。JIS第三水準なんだもん……unicode 8E20、shift-jis 0212:5f7c。 読みは「もがく」。「藻掻く」という当て字もあり。

183 距り (へだたり) 流石に「きょり」じゃないだろう。
200 縺れ(もつれ) 「ほつれる」は「解れる」らしい。

202 圧拉がれて(おしひしがれて)
「うちひしぐ」という語があるのは知っていたが、「おしひしぐ」もあるとは。
「おし‐ひし・ぐ【押し拉ぐ】」 の意味とは - Yahoo!辞書

203 嫋やか(たおやか)

文章に振り仮名を振らないことの弊害



振り仮名を振らないことの最大の弊害は、「読者が読めない漢字に振り仮名がなく、読みにくい」という点だろう。ただそれ以外にも問題点はあると思う。「作者がどう読ませたいのか読者は分からない」という点だ。
「捩れる」という単語が何度か出てきたが、これは「ねじれる」「よじれる」という2つの訓読みが存在する。と書いてから辞書で調べたら「もじれる」もこの字らしい。これらの意味はよく似ているから、作者が「ねじれる」と読ませたくて書いていても読者が「よじれる」と読んでしまう可能性がある。そんなこと気にしない、という作者ならいいが、少なくとも俺という読者は気になる。
「咽喉」も「いんこう」だと硬すぎるから、「のど」と読ませたいのかなぁ……と推測して読んでいたが、これだって間違っている可能性はある。

そもそも、読み終わった今でも題名の読み方がわからないんだが……「道標」は「どうひょう」とも「みちしるべ」とも読めるのだが、どちらが正しいという判断材料が本の中には無かった。


俺が気になった文


黒井千次という作家は、身体感覚、五感に関する文章が特徴的であり使い方が上手いな、と読んでいて思った。読んだ中で「お、これは面白い」と思った文を書き抜いた。

27 <若い芽>は、己にとって振り仰ぐ岩場ではあっても、足をかけられる傾斜ではないのを彼は知っていた。

61 暑さにふくらみかえった空気が鼻の穴や眼を埋めようとしてまわりで押し合いへし合いをしているのがわかる。

156 いや、次第に緊迫してくる<若い芽>の集りを密かに避ける後ろめたさを、丘の上での棗との時間の中で闇雲に燃やしつくしてしまおう、とするのが明史の本当の願いだったのだ。 棗が来ない、と知った時、明史は膨らみかえったまま行方を失ってしまった欲望と屈辱とに我が身がずぶ濡れになるのを感じた。

166 自己の興味や勝手な都合だけで気に入った部分を本から赤線で切り取り、そっと頭のポケットにしまいこむ、というのが明史の読書法だった。(中略)とりあえず彼は赤鉛筆の網の中に幾行かの文章をすくい取った。

185 慶子にそれを拾われて繰り返されたために、<友達>という言葉は奇妙に捩れ、迷惑そうに宙に浮いていた。

以上、おしまい。それでは。

本・雑誌
春の道標 (1981年)

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  1. 2013/08/10(土) 15:30:28|
  2. 本・漫画
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